光スイッチング機能を持つ分子性量子磁石の創製


 分子1つで磁石としての性質を示す単分子量子磁石は次世代型のメモリーデバイスや量子コンピューターへの応用が期待されている。これらの量子磁石特性を外場によって可逆に変換することができれば新しい分子素子としての応用の可能性が広がる。我々は可視光や紫外光によって分子構造や色が変化するフォトクロミック分子・スピンクロスオーバー錯体などをもちいて単分子磁石ユニットを連結することで、単分子磁石特性の光スイッチングや、単分子量子磁石⇔単一次元鎖量子磁石⇔古典磁石(バルク磁石)間のスイッチング機能の発現を目指している。

図1   図2
図 1 単分子磁石特性の光スイッチング(左)と単分子量子磁石⇔バルク磁石間のスイッチング(右)

ジアリールエテン骨格を有し、架橋可能なカルボキシル基を持つ配位子H2dae(H2dae = 1,2-bis(5-caxboxyl-2-methyl-3-thienyl)perfluorocyclopentene)はフォトクロミック特性を示し、可視光・紫外光で可逆な構造・色変化を起こす。我々は、単分子磁石ユニットとしてST = 9の[MnII2MnIII2]クラスターをもちい、dae2–で連結することで、単分子磁石が一次元的に連結された化合物 [Mn4(hmp)6(dae-o)2(ClO4)2].6H2O (1o) および [Mn4(hmp)6(dae-c)2(H2O)2](ClO4)2.CH3CN.6H2O] (1c) を合成した(Hhmp = 2-hydroxymethylpyridine, dae-oとdae-cはそれぞれジアリールエテン配位子H2daeの開環体と閉環体)。1o1cとも単分子磁石挙動を示し、それぞれDeff = 9.2 K, t0 = 3.2×10-7 secおよび Deff = 12.1 K, t0 = 1.7×10-7 secの活性化障壁、頻度因子をもつ。1o1cはフォトクロミック反応を示し、赤褐色から青色へと可逆な色変化を示す。光照射後の磁気挙動の変化は、1oの場合では大きな変化が見られなかったが、1cの場合は構造変化によって一次元鎖間の[Mn4]ユニット同士の反強磁性的相互作用が誘起され、顕著な磁気挙動の変化が観測された(M. Morimoto, H. Miyasaka, M. Yamashita, M. Irie, J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 9823-9835.)。


図3    図4
図 2 1oの構造(左)と1cの構造(右)


図5    図6


図 3 光照射による色調の変化 1o(左)1c(右)

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