研究内容

次世代型高次機能性ナノ金属錯体の新奇科学

ナノサイエンスが対象とするサイズ(1nm~100nm)は原子・分子のサイズとバルク材料のサイズの中間に位置し、その特異なサイズ故に原子・分子やバルクの世界では見られないような新奇な「非線形性」や「量子効果」が観測される。研究対象とする無機・有機ハイブリッド物質はこれまであまりナノサイエンスの研究対象とはなっていなかったが、電子状態だけではなく構造や機能性も自由に制御できることからナノサイエンスにとって非常に有望なターゲットである。これを用いて、磁性、伝導性、光物性、誘電性などの機能が複数絡み合った高次機能性に焦点を当て、そこから発現が期待される「新奇非線形性や量子効果」に基づき、近未来に実現が期待される「量子コンピューター」、「光コンピューター」、「大容量高速光通信」、「高密度磁気メモリー」、「単分子メモリー」などの基礎となる「次世代型」高次機能性ナノハイブリッド物質の創出をすることが当研究室の最終目的である。

擬一次元ハロゲン架橋金属錯体

金属錯体は元来、金属イオンが持つスピンや電荷といった電子状態の多様性と有機配位子が持つ格子振動・分子振動といった 構造の多様性を併せ持つために、純粋な無機物や有機物にはない金属錯体特有の性質が期待されています。

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本研究室で対象としているハロゲン架橋一次元錯体と呼ばれる錯体群(MX, MMX型錯体)は、金属イオンのdz2軌道と、 架橋ハロゲン化物イオンのpz軌道とが大きく重なる構造をしており、理想的な一次元電子系を形成しています。また、本化合物系は、 一次元鎖の中で、電子・格子・スピンという三者の自由度が強くせめぎあっている化合物群です。例えば、Ni錯体では、 電子の自由度(電子相関)が最も強くなり、Ni3+-Ni3+の平均原子価相を形成するのに対し、Pd, Pt系では、格子の自由度が支配的となり、 M2+-M4+の混合原子価相を形成することが知られています。

多孔性配位高分子(Metal Organic Frameworks)

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単分子磁石

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単一次元鎖磁石

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光スイッチング機能を持つ分子性量子磁石の創製

分子1つで磁石としての性質を示す単分子量子磁石は次世代型のメモリーデバイスや量子コンピューターへの応用が期待されている。これらの量子磁石特性を外場によって可逆に変換することができれば新しい分子素子としての応用の可能性が広がる。我々は可視光や紫外光によって分子構造や色が変化するフォトクロミック分子・スピンクロスオーバー錯体などをもちいて単分子磁石ユニットを連結することで、単分子磁石特性の光スイッチングや、単分子量子磁石⇔単一次元鎖量子磁石⇔古典磁石(バルク磁石)間のスイッチング機能の発現を目指している。


図2
図 1 単分子磁石特性の光スイッチング(左)と単分子量子磁石⇔バルク磁石間のスイッチング(右)


ジアリールエテン骨格を有し、架橋可能なカルボキシル基を持つ配位子H2dae(H2dae = 1,2-bis(5-caxboxyl-2-methyl-3-thienyl)perfluorocyclopentene)はフォトクロミック特性を示し、可視光・紫外光で可逆な構造・色変化を起こす。我々は、単分子磁石ユニットとしてST = 9の[MnII2MnIII2]クラスターをもちい、dae2–で連結することで、単分子磁石が一次元的に連結された化合物 [Mn4(hmp)6(dae-o)2(ClO4)2].6H2O (1o) および [Mn4(hmp)6(dae-c)2(H2O)2](ClO4)2.CH3CN.6H2O] (1c) を合成した(Hhmp = 2-hydroxymethylpyridine, dae-oとdae-cはそれぞれジアリールエテン配位子H2daeの開環体と閉環体)。1o1cとも単分子磁石挙動を示し、それぞれDeff = 9.2 K, t0 = 3.2×10-7 secおよび Deff = 12.1 K, t0 = 1.7×10-7 secの活性化障壁、頻度因子をもつ。1o1cはフォトクロミック反応を示し、赤褐色から青色へと可逆な色変化を示す。光照射後の磁気挙動の変化は、1oの場合では大きな変化が見られなかったが、1cの場合は構造変化によって一次元鎖間の[Mn4]ユニット同士の反強磁性的相互作用が誘起され、顕著な磁気挙動の変化が観測された(M. Morimoto, H. Miyasaka, M. Yamashita, M. Irie, J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 9823-9835.)。


図3    図4
図 2 1oの構造(左)と1cの構造(右)

図5     図6
図 3 光照射による色調の変化 1o(左)1c(右)


現在は希土類金属を用いた錯体に注目し、光スイッチング機能を持つ分子性量子磁石の創製を行っている。

単純な物質系で単一次元鎖磁石を実現

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